20年めの廃屋

母方の祖父が亡くなって以来、住む人がない福岡の家に
20年ぶりにいきました。

誰が管理しているのか正確には知りませんが、
みごとに周囲が変貌していて、記憶にある小鮒を釣った川さえ消えていた
川はどこにいってしまったんだ~~

近辺の道の両脇には黒々と葉を茂らせらた大木がうっそうと茂っていて、
いつも湿っている、妖怪がひょっこり出てきそうな、ちょっとこわい場所でしたが

それが、みごとにカラッと乾いた空気に変貌しているのに、まず軽くショックを受けました

大きな古い家ばかり並んでいて、そのあいだには車一台通るのがやっとの細い、舗装されてない土の道が
20年前はたしかにあったのに

道路になっていた

たぶん家はないな
更地になっているか、新築のアパートにでもなっているのかな
見たくない風景が出てくるんだろうなあ


出てこなくていいよ、見つからないほうがいいよ、と思ってもそういうわけにはいかなくて
ついにたどりついたら


驚愕の風景。


なんと、そのままだった。


まるで絵本の
「ちいさな家」です


家の周囲だけが、アパートや新築の一戸建てになっていて、
祖父が住んでた家は
そこだけ、祖父が死んだときのまま。
明治の初期にたったときのまま。

近づいてもっとよく見たいけど、
絵本の「眠りの森の美女」のように、
深い背のたかい草と竹やぶにおおわれて、足を踏み入れることもできない


遠く見えるのは
二階の一部だけ


どういう事情でこのままなのか、
関係者が死んでて、
わからないし
わかってる人に聞く理由もないのですが
母が一緒にいたけど、
親戚の家は人が住んでいるように見えたけど
会いに行く理由がなく・・・



祖父というのは、
かなりユニークな人でした


家のトイレのドア(大きくて重たい木の扉)を
照明のスイッチと連動させて自動ドアに細工してました

門扉も自動ドアだった
仕掛けをつくるのがすきなのです


来訪者が呼び鈴をおすと、

居間のテレビの画面に、門の外の人が映る。
同時に、庭先につくった犬小屋に突っ込んであるぬいぐるみに仕込んである
テープレコーダから犬の吠え声がリピートする仕掛けになっていて

居間にいる祖父の手元にあるレバーを動かすと、
ゴトゴトと、門扉が自動的に開くというあんばい。

屋根に届きそうな大木には、祖父がつくったブランコが下がり、
祖父がつくった小さな温室があり、
祖父の工房みたいな遊び部屋には、自転車を解体してつくったろくろがあって
焼き物も焼いていた

素麺流しをするために竹を半分に割ってくれて、庭で水を流しながら素麺をすすったのは、
私が33、4歳のころが最後
東京の友達をつれて遊びにいったら
その友人と祖父が仲良くなり、
大阪でデートした話を聞いたけど、
当時祖父は90歳になる少し前。

私が神楽坂で一人暮らしをしているマンションにも遊びにきて
一緒に、なじみのバーにいったり、小料理やにいったりして遊びました

祖父が若い頃、明るい時間の夕方だったそうですが、お風呂に入っていたら
いとこが窓から見えて、
お互いに、手をあげてあいさつしたそう。

「その数時間後、裏庭でそのいとこが首をつってな。ほら、あの木」

いろんな人が住んだその家には、いろんな持ち主の名前が書かれている本があって
何回か、神保町にもっていって売ったっけ

いちど、古本屋の店主から

「これは三冊でセットです。もう一冊あるかどうか探してごらんなさい。それがあったら十万で買うから」
(浄瑠璃の古い、楽譜でした)

といわれ、祖父に探してもらったけど
みつからなかった


江戸期から医者を輩出した家で、
和とじの、色刷りの、美麗な図版つきの医学書まで並んでたけど、
おじいちゃんは「もっていっていいよ」といったけど、
いかにも高額なそれを「ありがとー♪」と無邪気に持って帰るワタシじゃなかったことが
いまも悔やまれます。


おじいちゃんの家には、もう二度といかないでしょう



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