養鶏しかしてこなかった人生がつくる卵の味

toukichi[1]

先日ある農家から「おたくの卵はどうしてあんなにおいしいのか」とまじめな顔で質問されました

「おいしいといわれる卵をたべくらべて、おたくがいちばんおいしかった」
の声は全国のお客様から過去何度もうかがっております。
こちらに来た当初は、しつこく鶏舎をたずね、

「お父さんの卵は、どうしておいしいんですか」と聞いてました。

名人にありがちですが、言葉がいっぱいでてくるのに、結局よくわからない、ということが多かった。
インタビューの回をかさねて、やっとフムフム、わかったような気がしてきたことをおすそわけします。



「水やろうな」とあるときいわれました。「水をやらんけんやろうな」

ふつう、養鶏場で鶏は「水、飲み放だい」で育てられているとか。
「それで水ばかり飲んで腹がふくれるから、餌をたべん。
餌を食べん鶏は、体力がつかん。病気になりやすい。余計な薬が必要になる」

じゃ、養鶏するひとはみんな水をあげなきゃいいじゃないですか?

「それができんとやな。うちは一日に二回しか水はやらん。量も少しだけ。
野生の鳥を観察して水の配分をみつけたとたい。
野生の鳥は昼間のあいだ餌ば食っても、水は一日の最後にちょっと飲むだけ。
飼われとる鶏だけが水をほしがるわけない。
ほしがるのは、ほしくなるような習慣をつけたから」

なるほど。水をやらないからたまごの白身も凝縮されるんですね?
(料理人さんからこんな白身のうまい卵はない、と絶賛されたことも)


「そう。白身が締まる。それに水を飲めば飲むだけ鶏は糞をだす。
それが鶏舎をフンだらけにする。衛生状態が悪くなる。また薬が必要になる」

特別なこと、他に何かあります?

「にんにくと唐辛子を漬け込んだ水を餌の上にふりかけよる。
餌がおいしくなって、鶏は餌を余計に食べる。にんにくと唐辛子は体力つけるのにもいいしな。
EMぼかし(あとで説明します)も毎日やる。うちは一日一回しか餌をやらんが、卵はよくうむ」

たまごを生まん場合は、どういう理由がありますか?

「水をほしがる鶏を我慢させて水をやらんかったら卵を生まん。
うちの鶏はもっと欲しいと思わんよう生後百日くらいからしつけてある。
鶏はストレスがあると生まんと」

うちの鶏はストレスないんですか、ほんとですか? なんでそれがお父さんにわかるんですか?

「うちの鶏は落ち着いとる。騒がん。
あちこち種鶏場やら養鶏場は行ったけど、養鶏場が大きいとこでも小さいとこでも、うるさいとこはうるさい。
そういうところは、鶏が安心してないとやろう。落ち着いてない。
鶏舎の大きさじゃないとやろうな。わたしは若い頃からよくいわれよった。あんたんとこは、鶏舎が静かやな、と」

(熊本に引っ越してくる前、福岡でお父さんが経営していた養鶏場は今の百倍の規模でした)

どうして静かなんですか?

「愛情もって育てる。世話する人の心が落ち着いてないと、鶏は落ち着かん。バタバタ動いたらいかん」

ああ、おとうさん、鶏の顔がみんなわかると言ってましたもんね。
世話をする従業員の性格も大事だって。静かな理由は愛情だけですか?


「あとEMやな。月に一回、500~600倍に希釈したEM液を噴霧器で鶏舎ぜんたいがびしゃびしゃになるごとまく。
ハエが全然おらんとはいわんが、まあほとんどおらんのは、EMのおかげ。
ハエがおらんのは、ウジが成長できんから。鶏が騒ぐ原因になるダニもそんなにおらん。
鶏の体にもEMはまんべんなくふりかかっとるからな」

(お父さんは世にEMが出始めた黎明期から養鶏に採用しています)

だからうちの鶏舎は臭いがほとんどないんですね?

「あとこれたい。これをやるから黄身がおいしくなる」

と、見せてくれたのはパプリカ(赤ピーマン)の粉末。
金額が張るので、オトーサンのいちばん自慢の餌のようでした。毎日の餌に欠かさないのは、EMぼかしです。
これはEMの液とぬか、糖などを加えて50日間発酵させたものです。                                 

鶏の餌にパプリカをいれるのは、黄身の色に赤みをさすためだとしばしばいわれますが、
うちの餌の配合バランスにおいてパプリカが果たす役割は、黄身の食味をよくすることのようです
   
「ブロイラーにはブロイラーに必要な餌がある。たまごを美味しくするには、卵を美味しくする餌があるとよ」

別のときに
「お父さんのいうことをみんな実行したら同じにできますかね」と聞きますと、

「うーーん」と考え込むので、
「言葉にできんことのほうが多いですか」と生意気にも助け船を出したつもりでたずねると、
80代の老賢ぶりにはいつも驚かされておりますが、またしても私をふっとばす発言を。

「わたしにわからんことのほうが多かとよ」

デジタルに質問攻めにすると、何かがわかると考えるのは、毎度ながら、私のあさはかなところです。
いまだわからんことが多いのは、果樹だって同じ。医学だって栄養学だって宇宙の成り立ちだってすべて同じ。
若い頃から名人がいるときけば、日帰りを断行してでも数千キロのかなたへ足を伸ばし、古書から最新刊まで本を集め、何十年も学び続けた果てにでてくるこの言葉はじつに重いです

お父さんが、
卵の質をよくする要因としてたどり着いた核心は、「愛情とEM」だったということでしょうか。
養鶏場に生まれ育った園主は、さすがに質問しないで、お父さんの言語化できないとこをくんで分析してました。

「鶏舎の環境がいいんだとおもう。
人が考えるいい環境が鶏にとってのいい環境じゃないのはたしか。ふつう、そこんとこが誤解されてる。
おとうさんの場合、あれは偶然か考えてやってるかどうかはわからんけど」


人よりも鶏に百%向き合う人生をしてきた老人の方法は、マニュアル化のできない、言葉にならない世界です。
たまに、「鶏の餌に小麦は入ってますか? 産地は?」など、言葉の世界からきたお客様の質問を伝えると
「その人、断ってくれ」と顔に書いてあります。答えは「含まれてます。アメリカです」


ゆで卵もケーキもごはんにかけてもおいしい卵は、錦自然農園フルーツストアと錦町道の駅で販売中


★ぽちっと、してくださると喜びます★

にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村



関連記事
スポンサーサイト